或阿呆の正月

某月某日


「せっかくの正月休みだし、怪我でもしとこうかな」

2023年の最終営業が終わり、いそいそと重量挙の準備をする。

トレーニングといっても、安全で美容や健康に資するもの(ボディメイクやフィットネスなど)と「そうでないもの」とがあり、重量挙は後者に属する。

重量挙は、身体が嫌がる重さのバーベルを差し挙げる遊びである。

「危ない」「怖い」「痛い」という身体の声を無視して、自身をバーベルを挙げる道具へと擬態する行為である。

扱うバーベルが重ければ重いほど、危なければ危ないほど楽しみが増すのが厄介なところだ。

私のように自ら事業を営む者には体を壊して休む自由がないから、本当は重量挙なんてやっていられない。

それでも日々”健全な”トレーニングをし、顔が痛くなるようなマスクをつけ、外食や旅行など娯楽の一切を断って仕事のための体調管理に努めている私にとって、重量挙だけが最後に残されたレジャーなのである。

かくて、右膝の古傷を痛めて私の2023年は終わった。

某月某日

新年早々、真新しいノートパソコンに向かって2024年のエスキースを描く。

2023年は経営環境が大きく変わり始めた1年だった。

市内には同業の出店が相次ぎ、隣には大手低価格無人ジムが進出してきた。

この流れが一段と加速するであろう2024年にあっても、ヨンデーは現在の顧客と未来の顧客にとって「取り替えの利かない場」でありたい。

そのためには一層の知識量・技術力・独自性を積み上げ、他を突き離すような仕事を為さなければならない。