「2ヶ月で劇的なダイエット」のウソ


いまだ極端な食事制限をダイエットの秘技のように考える人が少なくない。

いきなりケトジェニックに挑んだり、絶食に近い食事制限をしてみたり。

こうした方法もやり方の一つではあるが、問題は「その人にとって妥当か」である。

そもそも、これらはボディビル・コンペティターたちの「調整食」であった。

彼らの食事は増量食・減量食・調整食に分かれる。

増量食とは、筋肉量を増やすための食事のことだ。

最低でも体重✕3g以上のタンパク質、良好なホルモン産生を促すための充分な脂質、そしてハードなトレーニングで筋肉を損なわないための大量の炭水化物からなる。

そして減量食とは、体脂肪を落とすための食事をいう。

大量のタンパク質はそのままに、目標摂取カロリーとのバランスを見ながら脂質と炭水化物の摂取量を調整していく。

さて問題の調整食とは、減量終盤に用いられる短期決戦用の特殊な食事だ。

脂肪が落ちた身体から、さらに筋肉の上に薄い皮膚が一枚乗るだけのコンディションを作るべく、ミネラルバランスにまで介入しながらギリギリの摂取カロリーまで落とす。

調整食の段階までいくと、外見的な「健康美」とは裏腹に頭は働かず目はかすみ、声も出なくなる。

要は飢餓状態であるから、運動すれば目眩や立ちくらみが起き、シャワーを浴びると髪が抜け、手を見れば皮膚が荒れて出血もある。

そんな状態でも外見がどんどん「仕上がっていく」高揚感で我々トレーニーの目はギラつき、時間を忘れて自分の「最高の外見」に見入るのである。

手品のタネ明かし

さて、ここまで読んでくればお分かりだろう。

短期契約型のボディメイク系トレーナーやダイエットジムたちが提供する「2ヶ月の特別なダイエット」とは、調整食という特殊な劇薬を素人に飲ますものにすぎない。

増量食で筋肉を増やして減量食で脂肪を落とす、この長期的な取り組みだけが筋肉質で脂肪の少ない「良い身体」をつくる。

しかして調整食とは、既にある良い身体をより良く見せるための侵襲的かつ特異的なテクニックにすぎず、普通の人の身体づくりにとっては意味がない。

なぜなら、そもそも存在しない「良い身体」をより良く見せる方法など、どこにもないからである。

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