ヨンデーの一年
2024年は、真隣に全国チェーンの低価格ジムの出店を迎えて幕を開けた。
かれらは全国各地で、ちょっと光る仕事をしている個人ジムの真横にぶつけるように出店を重ねている。
目障りな看板を見ながらいろいろ考えた。
「少し頑張ってパーソナルトレーニングを始めてみよう」というエントリーユーザー層が持っていかれるのではないか。
あるいは、彼らの強力な広告宣伝によって人流が生成され、その影響でヨンデーを検討する人も増えるのではないか。
・・・ところが蓋を開けてみれば、何ひとつとして影響はなかった。
2024年のいま、パーソナルトレーニングはパーソナルトレーニングとして、低価格ジムとは別なものとして、人々にしっかりと認知されていたのである。
パーソナルトレーナーとは何者か
改めて、パーソナルトレーニングとは、パーソナルトレーナーとは何だろうか。
パーソナルトレーナーの起源は1970年代のアメリカに遡る。
カラダ自慢や力自慢の素人が、対価を取ってトレーニングを人に教えるようになったのである。
やがて1980年代に入るとパーソナルトレーナーの専門教育・認定団体が相次いで立ち上げられ、専門職として次のように定義される。
「パーソナルトレーナーとは、健康な個人に対し、科学的に正しい運動方法と、健康的な生活習慣・食事習慣を指導する専門職である」と。
パーソナルトレーナーは医者でも栄養士でもない。
単なる裸自慢でもなければ、トレーニングを教えるだけの人でもない。
リハビリやマッサージの「コッカシカクシャ」でもない。
パーソナルトレーナーとは「健康的な生活習慣へと人を導く専門職」として、「かれら」にはできない仕事を創造していく者である。
この明確かつ曖昧な定義の通り、パーソナルトレーナーの学ぶべき範囲は広大だ。
不良姿勢からくる諸問題に対処するには治療家的な知識が不可欠であるし、栄養の知見も常に更新されなければならない。
もちろんトレーニングの知識と技術は磨き続けなければいけないし、事業者として経営を学ばなければ先はない。
かくて今年も変わらず専門書を読み、仕事をし、バーベルを担ぎ、経営の本を乱読して寝るだけの1年が過ぎた。
「ここまで勉強しなければいけないのか」「仕事以外の人生を捨ててしまっていいのだろうか」と自問することもある。
けれど、ヨンデーの仕事を真っ当に評価して通ってきてくれる方々に夢と希望を手渡すという責務の重さを思えば、寝言をいっている暇などないのである。