ジムができるまで⑤

前に大手スポーツジムを見物に行ったとき、退会手続きに来ていた男性と受付で一緒になった。
30代後半と思しき彼は、3ヶ月間も通えていなかったので退会するという。
喫煙者特有の顔色をしており、お腹ははち切れんばかりに膨らんでいる。

これではまずいと思って入会したのだろう。けれども続かなかった。
一体何故だろう。

意志が弱いから?
違う。
趣味レベルの運動に意志など要らない。

仕事が忙しいから?
違う。
そこまで多忙ならジムには入会していないだろう。

つまらなかったから?
・・・おそらく正解だ。

ジムは退屈だ

スポーツジムのチラシを見ると、女性モデルが満面の笑顔で運動らしきことをしている。
けれど実際にジムで笑顔になるなんて、顔見知りと立ち話をする時くらいのものだ。
一般に想像されるようなジムならではの楽しさというのはない。

ほとんどの人は一言も発することなく黙々とマシンを動かし、踊りをやり、シャワーを浴びて帰る。
夜のスポーツジムなど、まるで満員電車に詰め込まれているような錯覚におちいる。
見ず知らずの他人同士が狭い空間に詰め込まれ、互いに無関心を装いながらフラストレーションの爆発に耐えているあの感覚。

仕事のストレスを発散しようとする人々で混雑するジムは、満員電車よりストレスフルかもしれない。

一日の仕事を終え、疲れた足でそんなストレス空間に行くよりは、行きつけの飲み屋でバカ話に興じる方がよほど「健康的」だろう。

ジムには何を求められているのか?

そもそも、多くの人は何を求めてスポーツジムに通うのだろうか。
ストレス解消?
筋トレ?
健康管理?
楽しそうな雰囲気?
ダイエット?
出会い?

もしこの程度のものしか求められていないのなら、スポーツジムなど無いほうがいい。
なぜなら、これらの代替手段など今やいくらでもあるからだ。
コロナウイルスへの感染リスクを負ってまで通うほどの場所ではない。

ジムは、多くの人がまだ気付いていない価値を提供できない限り消え去っていくだろう。
もちろん当方にはそうした新しい価値を示す用意があると自負しているし、それゆえこんな時代にスタートを切るのだけれど。